現在、日本国内に糖尿病と診断された方は約900万人おり、境界型•予備軍を含めると2,000万人を超えると推定されています。30年前は成人の100人に1人が糖尿病だったのに、現在は6人に1人です。一方、肥満者(BMIが25以上)も国内に約2,000万人おり、最近の30年間に4倍近くに増加しています。これらの生活習慣病(メタボリック症候群)は心筋梗塞、脳卒中といった寿命に影響する重大な疾患を引き起こす危険性が高く、新しい治療法や予防法の開発が急務となっています。
国内の糖尿病患者さんの約5%はインスリンを分泌する細胞である膵β細胞が自己免疫機序で破壊されて発症する1型糖尿病で、残りの95%は2型糖尿病です。これまで2型糖尿病は肝臓、骨格筋、脂肪組織といった末梢臓器におけるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)と膵β細胞の障害が合わさって発症すると考えられてきました。しかしながら、最近の遺伝子改変動物(ノックアウトマウスなど)を用いた解析から、グルカゴンを分泌する膵α細胞の障害や中枢(脳の視床下部)におけるエネルギー制御破綻もまた、2型糖尿病の原因になることが分かってきました。そこで私たちはインスリン抵抗性、膵β細胞、膵α細胞、視床下部を標的にして、主に動物モデルを用いた研究を行っています。糖尿病や肥満が発症する分子メカニズムを明らかにし、これらの疾患に対する新しい予防法や治療法の開発に貢献するべく努力しています。